どれぐらい経ったのだろうか―

 奏汰は、額から耳にかけて汗が流れ落ちる感触で目が覚めた。
 起き上がりながら、着ているTシャツに手をやると、水でも浴びたようにグッショリ濡れていた。

「うえー気持ちわりー。マジあちぃ。着替えよう。」

 誰に言うわけでもなく、呟いて立ち上がり、居間を眺めた。相変わらずマツエは椅子の上で、加代子も座卓に腕をついてうたた寝していた。テレビの上のアンティーク調の置き時計は、1時半を指していた。

「1時間か、そんなに寝てないか……。」
 何となくほっとして、二人を起こさないようにそっと自分の部屋に向かった。
 
 奏汰の住む家は古い日本家屋で、土間があり、部屋も襖を開ければほぼ全部の部屋繋がって大きな一つの部屋になる。
 勿論、奏汰の部屋も、双子の姉、奏絵(かなえ)の部屋と繋がっている。

 自分の部屋の襖を開け放つと、激しい違和感を覚えた。

―まただ。なんだ?何か俺忘れてる気がする。

 
 部屋の様子が違った気がした。
 いつもはあるはずの壁がない。
 変わりに奏絵の部屋が見渡せた。

 奏汰の胸の奥で、何かが激しい音を立てて崩れていったように感じた。