「ヤベっ。寝ちゃった。」

 窓からの夜風で身体が冷え切ってるし、異様な喉の渇きで目が覚めた。
 
 目をこすりながら冷蔵庫に向かうと、入ってるのはビール3本と酎ハイ5本。
「てか、なんでうち酒だけ?」
 あまりの堕落した食生活に苦笑いしか出てこない。
 喉の渇きを癒すため、何か液体が欲しい。
 酒かまずい水道水か。迷うことなく、冷蔵庫から500ミリ缶ビールを取り出し、勢いよく飲み干した。
 ふと、さっきまで寝転がっていた窓辺に目をやると、今持っているのと同じ空の缶が3本転がっていた。

「サイテ~あははははは。」
 なんだか楽しくなってきた。

 飲み終えた缶を流し台に投げ捨て、その場に大の字になって寝転んだ。

 ―ほんとわけわかんね。

 今にも伯母や祖母の小言が聞こえてきそう。

『奏汰!!あんた、何のために高い学費の美大に入ったの?!1年の単位半分落としてんじゃない!何年そんな生活続けようとしてるの?!』

 ―ほら、聞こえる。春休みに帰った時に、郵送された成績表見てぶちきれた伯母ちゃんの声がまた聞こえるし。あはは。

『そうちゃん、またご飯たべてないんだろ?こんなに痩せちゃって。おばあちゃんの目が無いからって、隠れてたばこやら酒ばっかでねてんだろ。』

 ―あったりぃ。さすがばあちゃんはするどいね。隠れてないけどね。

『奏汰ー。お腹すいてんのかい?そこの戸棚に大好きなお饅頭入ってるよ。食べなさい。一個しかないから、奏絵には内緒だよー。』

 ―重症だ。ひいばあちゃんの言葉まで思い出した。饅頭なんて好きじゃないし、カナはもうずいぶん前にいないだろ!!

 急に胸の奥が熱くせり上がってくる。

 無性に泣きたくなって、声を出して泣いた。


 ―わけわかんねーよ。