満月の夜―

 月が大きく明るい夜は、部屋中の電気を落として、窓辺で缶ビールを飲むのがきまりだった。

 月明かりだけが自分を照らしてくれる。
 部屋の外に出れば、何かしらのネオンが邪魔してしまうけど。部屋の中だけは、暗闇に包まれることが許される。

 暗闇に抱かれ目を閉じる。
 オレの意識は月明かりを道しるべに、意識を旅に出そう。
 そうすれば、カナの気配を感じ取れるような気がした。
 くだらない願掛けみたいなもの。
 
 カナと過ごした場所をオレも離れた。
 
 もう一度会いたい。
 そして4年前、なぜ去ったのか聞きたかった。


 日中の雨が嘘のように晴れ渡って、今日もまんまるの月がオレに会いにきた。
 カナと離れた日々が、今日の雨模様のみたいに、パッと去ればいいのに。
 月みたいに素知らぬ顔で、いつでもオレの前に現れればよい。

 カナ。

 奏絵―。

 オレの半身。

 一人じゃ生きていくのは辛い。





 あの日みたいな心地よいまどろみに襲われ目を閉じた。
 
 このまどろみからさめたら、オレは何を奪われるのだろうか。


 怖くて眠れない。

 意識が途切れた。