「え??!明日香気に入ってたんじゃないの?」
 あんなにラブ光線出してたはずなのにと驚いた。

「あれは、良い男に会ったらの決まりもんでしょー。でもダメすぎ。」
「……どのへんが?」
 なんて聞いてみたけど、ほんとは明日香のダメだしがどの辺りかは、バッチリ予測がついていた。
「だって、あの先輩チャラすぎ。ノリって大事だけど、いきなし『チャン付け』の男はダメー」
「うん、だよね。」
 私は頷きながら、ビンゴ!!って内心喜んでしまった。
「羽澄もそう思ったでしょ?」
「うん。引いた。明日香は意外と体育会系の人が好きだよね。男ー!!無口ー!!って感じの。意外だけど。」
「そ、男はストイックでないと!私がお喋りな分、ドーンと構えて聞いて欲しいっていうか。」
「ストイックね……。」
「当然!!……てかあの先輩、怖い。目が笑ってないもん。だから余計ダメ。裏表ありそうで怖い。」

 ―あ、明日香も先輩の目が笑ってないことに気がついてたんだ。

 意外な気もしたけど、明日香には分かる気もしてた。
 二人で立ち止まり、目をジッと見つめ合い、ニンマリ笑った。

 ジリリリリリ―
 と授業開始の本鈴がなり響いた。
 廊下は、教室へ急ぐ学生の姿に溢れていた。

 私たちも、トイレへは行かず、教室に小走りでトンボ帰り。

 外はシトシトと音も立てずに雨が降り続いていた。
 細かい雨粒で、グラウンドが霞んでいた。