幼い頃からの莉依への"好意"。

それは生半可なものではなく、長い長い年月を掛けて大きくなった…"愛"だ。

だが、それを悟られまいと離れるも、無意識で莉依を目で追っている。

少しでも視界に入らないだけで、俺はダメになるんだ。

そんな事知られるわけにはいかねぇ。

きっと、莉依は俺の事を"兄"てしての好き=憧れという気持ちしかないから…。

そう思われていても、俺には大切な…想い人なのだ。

例え想いが通じなくても、莉依を傍で守って行くんだ。

幼い頃の莉依の寝顔を見ながら、俺は密かに誓ったんだ。

「なぁ、めっちゃおっかない顔してんで?組員が震え上がっとるからやめーや。」

礼のひと声にハッとする。

「眉間に皺を寄せてはいるが、近寄りがたい雰囲気はだしてるつもりはねぇ。」

「あかん、若無自覚や!」

ケタケタ笑う礼に同意するかのように晶が頷く。

「そんなにご心配ならば、速く仕事を終わらせましょうね。」

「分かってるよ…。」

ぶっきらぼうに言うと、口調が穏やかだった晶は豹変。

「こっちだってヒヤヒヤなんだよ。オメーだけじゃねーんだよイライラしてんのは。」

こんな時だけ口調を戻しやがって…。

晶も礼も、内心気が気じゃないのは分かっている。

頭では分かってるんだよ。
だけど、莉依の事となるとどうしても…。

「まぁ、気持ちは分からんでもないが、やらなきゃ終わらないぞ。」

唯一、マトモな事をサラッと言って書類に目を通している慶一郎。

"自分は、こんなことになるなら近くに想い人は作らない。"と言っていた慶一郎は、なんとも余裕…。