「ありゃ、素直じゃねぇな。」
「りゅうちゃ…!龍也さん。」
私の詰まりように、思い切り噴いたりゅうちゃんこと龍也さん。
「もー、慣れないよー!」
「ははっ。別に良いぞ?ここは組でも何でもねぇ。 しゃっちょこばることねぇだろ?組の外では"りゅうちゃん"でいいぞ。」
私が慣れなきゃなのに、優しく返してくれるりゅうちゃん。
目は鋭く、近寄りがたい雰囲気だが、こうして周りの事を見てくれる優しいなぁ。
って…。
「誰が素直じゃないって?」
「ん?まぁ、お前も気付かないってのもなぁ。」
頭をワシャワシャかきながら、りゅうちゃんは話を続ける。
「こればっかりは、自分で気付かないとなんだけどな。まぁ強いて言えば、自分を見失うなよ。」
りゅうちゃんの言葉に、思わず顔をあげてしまう。
目線の先には、優しい表情だが、目はしっかり私を捕らえている。
"のみ込まれるなよ"
そう言われているようで…。
真剣な表情に、ゴクリと喉が鳴る。
「なーんてな!お、やべー。清宮殿がご立腹だこりゃ。」
おちゃらけたりゅうちゃんにホッとするのもつかの間。
彼の視線の先を辿ると、不機嫌な翔ちゃん。
怖い…怖いですよ!
「何で怒ってるのかね。」
「それだけ、溺愛してんだよ。」
ボソボソっと話したりゅうちゃんに、私は聞き返すけど、ニコリと笑い何でもないと言う。
「さぁて、俺は殿様のご機嫌取りにでも行くかねー。」
翔ちゃんのところに行き、恐れることなくちょっかいを出すりゅうちゃん。
椿のお兄さんは…、怖いもの知らずですね。
「私だけが…こんなに好きなんだもんなー。」
私の言葉は、波音に消されてしまった。
まるで…。
私自身を消してしまうような…。