「元々、俺がシークレット組員だと知っているのは、当時組長だった功希と、そして鴻巣と中里夫妻のみだ。功希はこうなることを予期していたのか、何かしらの形で、シークレット組員のことを奏希に伝えていたようだがな。」

「…シークレット組員なら今、俺らに何で手を貸してくれるのか…。」

そう俺が言うと、烏丸信吾は笑いだした。

「そうだよな!普通はそう思うわな。」

「何や、急に笑いだすからビビるやんけ。」

「わりぃわりぃ。俺が手を貸す理由は一つ。澤田との確執を終わらせるためだ。」

こいつの考えてることは、鴻巣と同じだ…。

「鴻巣も同じ事を言ってたな。」

「まぁ、アイツは功希のことすげー慕ってたからな。で?どう動くつもりだ?鴻巣は裏からでも守るんだろ?」

この人、スゲーな。
鴻巣の動きも予想できてる。

さすが、歴代最強と言われ、恐れられた初代白龍の幹部だっただけある
伊達に莉依の親父さんを副総長としてフォローしていたわけじゃないな。

「澤田が組員を動かしたら俺達も動く。それまで待機だ。莉依のことだ。最初から出ると、行かせないように何かしらの策を瞬時に練る筈だ。」

「なるほどね。確かに、功希の娘である莉依ちゃんならやりかねないな。」

そう話していると、タブレットを触っていた慶一郎が、何かを見つけたようでこちらに見せてきた。

「若、澤田のデータベースを見たところ、姫野に向けてだろうと思われるメッセージがあった。」

夜深く、光消えしとき、
野原の雲が多く見えし闇夜を
九時の漆黒が生み出し、
時は流れ君を想う。
似ている眼差し重ね合わせ、囁く。
澤のほとりに小鳥が謳う。
田畑が奏でる愛の中、
組織をも消し去る力を手に入れた。
経た時は戻らずとも、愛は永遠。
来たるその時、
いとおしいと心から捧げよう。


…何だこの気持ち悪い文章は。

「夜深く、消えしとき…ですか。」

「長ったらしいメッセージやっちゃのう。」

晶と礼が頭をひねって考えていると、慶一郎が言葉を発する。

「これ、縦読み暗号じゃないか?」

それに反応するかのように、烏丸信吾も話し出す。

「澤田の手口の一つだ。現に俺はこれを白龍の時に何回も見てる。」

目をつぶって深呼吸をした烏丸信吾は、暗号の言葉をゆっくり読み上げ始めた。