「てめぇ!一回シバいたる!」

「おーおー、やってみろ!勝てたことねぇくせに。」

ギャーギャー喧嘩が始まってしまった。
これからって時に、コイツら緊張感がないね。

「縦読み暗号とは、言葉遊び・折句の一種です。一見すると通常の文章ですが、各行の頭文字をつなげるとメッセージが表れる文章になっているんです。読ませたい文章や単語を先に決め、縦に読むとそれが現れるんですよ。」

なのでこの文の頭文字を繋げると…。

そう言ってゆびを指しながら、新はゆっくり言葉を繋げる。

『夜の九時に澤田組へ来い。』

「夜の九時だなんて、暗くて見えずらい時間を指定してきたわね。くそクマオヤジが。」

私が毒づいてると、優杏さんはプッと言う音を出していた。

「突っ込むとこそこ?」

「だって、明るい時間のが見やすいほうがやりやすいし…。」

「何か莉依ちゃん見てると、緊張が解れるわ。」

笑いが止まらないらしい優杏さんは、お腹を抱えながら、目には涙を浮かべていた。
その様子を、大和は呆れたように見る。

「たっく。優杏、気を付けろよ?お前にも何しでかすかわかんねぇからな。」

「分かってるわよ。もぉ、過保護か!」

大和と優杏さんのやり取りを見て、思わず笑みがこぼれてしまう。

「仲が良いわね。お似合い。」

私の言葉に、2人は顔を赤らめ照れている。

「…巻き込んでは駄目ね。」

皆に聞こえないくらい小さく言った言葉は、静かに消えていった。