「魁くん爽のこと、ちゃんと見てあげて。爽のこと、ちゃんと考えてあげて。爽はずっと魁くんのために努力を重ねてきた。そんな爽を軽く見ないでほしい。ただの幼なじみなんかじゃないと思う」

「幼なじみ、か...」


魁くんはそう呟くと鼻の下をこすった。


「幼なじみってすごく都合の良い言葉だよな。友達以上恋人未満の男女に友情を成立させるのも幼なじみっていう関係の悪用でもあったりするし」

「ふふ。確かに」

「...わかった。澪の気持ちはこの胸でちゃんと受け止めた。だから...だから、どっからでもいいからとりあえず応援しててくれ。俺、澪の声も、澪の演奏も、どっちも大好きだから」

「うん。分かった...」


魁くんは再びミットとボールを手にした。

練習を始めるのだろう。

負を全て断ち切り、正に変えるために、

魁くんはボールを投げ始めた。

わたしはその姿を背に、自分の行くべきところへ向かった。


答えも、

終わりも、

始まりも、

もう見えていた。