わたしにはあともう1つどうしても伝えておきたいことがあった。


「あのね、魁くん。魁くんにお願いがあるの。これは魁くんにしか頼めないんだ。だから、聞いてもらえる?」

「それなら、もちろん。何?」

「わたしは試合中応援出来ないけど、爽がいる。爽のために投げてほしい」

「えっ?」


この様子だと全く気付いていないよう。

魁くんもわたしも鈍感過ぎだよね。

鈍感は人を無意識に傷つける。

それもこの夏を通して学んだこと。

誰も傷つけないなんてことは出来ないけど、その傷口を浅くすることは出来る。

わたしはそう出来るようになりたい。

だから、早速実践させてもらう。

わたしにとっても、魁くんにとっても大切な存在である爽のために。