8月29日午前7時。

わたしは音楽室に1番乗りをし、楽器ケースと荷物を置くと、グランドへ向かった。

約束をしていたんだ。

魁くんと。

魁くんはグランドの真ん中で投球練習をしていた。

その姿を見て爽を思い出さずにはいられなかった。

爽はずっとこんな感じで、魁くんの1番近くで魁くんを見ていたんだよね。

それなのに魁くんはわたしを...。

罪悪感の波に拐われそうになったけど、わたしは必死に顔を上げた。

こんなところで飲み込まれていられない。

今日は魁くんに大切なことを伝えに来たんだ。

だから、ここで負けちゃいけない。

この口で、この胸に大事に抱えてきた想いを伝えるんだ。


わたしは真っ直ぐ前を見つめ、魁くんの元へと歩いた。

魁くんはわたしに気付くとすぐにミットとボールを置き、わたしに向き直った。