さつまくんはわたしが出来ていないところを的確に指摘し、居残り練習に付き合ってくれた。

毎日バス停まで楽器ケースを持って歩いてくれた。

愚痴やネガティブ発言ばかりのわたしに嫌な顔1つせず、むしろ得意の薄笑いを浮かべて楽しそうに話を聞いていた。


そう。

好きだと言ったからといって、さつまくんは態度を変えなかったんだ。

だから、わたしも何も変える必要はなかった。

なかった、のだけど...

変わってしまった。

今まで見えてた景色と今見えてる景色は180度違う。

魔法にかかったみたいに、さつまくんの一挙手一投足がスローモーションになって見えて、何度も何度も脳内で再生される。

その度に胸がキュンと鳴り、我に返った時にシュンと鳴る。

こんなにも心が動かされるのは、あの日以来。

風くんと一緒に掃除をしたあの日...。

風くんがキラキラして見えて、ピンク色のオーラを纏っているように見えた。

微熱も、鼓動も、何もかも、

あの時の再来だった。


"好き"って言われたから意識してしまったとも思えなくもない。

けど、この感情に至るまでにはそれなりに段階が必要なのも分かってる。

初恋とも一目惚れとも違う。

けど、分かるんだ。

今なら...分かる。


やっぱりわたしに大切なことを教えてくれるのは、

さつまくんだけだ。