「山本さ、どうしてオレと椎名さんを見てそういう気持ちになったのか、分かる?」


わたしは首を真横に振った。

そんなの分かるわけない。

感情に名前をつけようとしてもモヤがかかって良く見えないから。

こんな不鮮明な輪郭じゃ判断出来ない。


「分からないならどうすればいい?」


分からないなら...

分からない時は...


「考える。自分で考えてみて分からなければ聞く」

「で、山本は考えたわけ?」

「うん」

「それでも分からない、と」

「うん。だから...」


聞く?

聞くって誰に?

といっても、答えは目の前にしかない。

わたしが聞けるのは、この人しかいない。

さつまくんのことで混乱してるのに、さつまくんに聞くって矛盾してない?

でも...

でも、

聞くしかないか。

聞けるのは、今だから。

今しかチャンスはない。


わたしは口を開いた。