「山本」

「何?」


声のトーンが低くなる。

自分の思い通りにいかなかったからって、こんな露骨に不快感を表すなんて子供じゃん。

わたし、どうしちゃったの?


「なんで今日はそんな感じなわけ?」

「知らない」


知らないわけない。

自分が1番良く分かっている。

分かっている、はず...。


「その顔はなんかあったって顔だ。何があった?」

「何もない。大丈夫」


わたしが突っぱねると、さつまくんは声を荒げた。


「あのさ、そういうの止めろよ」


街灯の下、オレンジ色に染められたさつまくんは淡く燃えていた。


「全部じゃなくてもいい。分かる範囲でいいから、話して。オレがちゃんと聞くから」


ぽちゃんと音を立ててわたしの胸に雫が1つ落ちた。


話を聞いてほしい。


たったそれだけのことだ。

その一言さえも素直に言えなかった。

どれだけわたしは不器用なのだろう。

どれだけ素直じゃないのだろう。

もっと上手に感情を表現するにはどうしたらいいのだろう。