「おい、山本。山本、起きろ」

「ん?」


気がついた時には、辺りはもうすっかり暗くなっていて、より鮮明に星や月が見えていた。


「こんなとこで寝るとか、度胸あるな」


皮肉なことを言って来るのは、もう彼しかいない。

顔を上げて確かめなくても分かる。

ぐちゃぐちゃになった顔を何度も見せて来た相手だけど、今日ばかりは見せたくない。

わたしは顔を伏せたまま呟いた。


「疲れてて寝ちゃっただけだから」


そう言って口をつぐんだ。

ちらっと腕時計を見ると、時刻は19時42分。

単純に考えて30分は寝ていたことになる。

確かにすごい度胸だ。

寝る度胸はあるのに、誰かに何かを伝える度胸はない。

ほんと、わたしは意気地無しだ。

そんな自分がすごく嫌だ。

今日はより一層嫌いだ。