あの日、エクリードはスーリアに告げた。

「その野菜の治癒能力はさっそく試そう。だが、アルの腕は治らない可能性もある」

 スーリアは無言でエクリードを見つめた。エクリードはそのスーリアの顎に手をかけ、上を向かせた。

「スーリア。お前の力は何十人、何百人もの優秀な聖魔術師の力に匹敵する。スーリアが望むのなら、俺の妻の座をやろう」
「エリクさんの妻の座?」
「ルーデリア王国の王子妃の座だ。多くの女が咽から手が出るほど欲しがる、垂涎の地位だぞ」

 ニヤリと笑うエクリードを見上げ、スーリアは無表情に顎に添えられた手を払いのけ、首を振った。

「いらないわ」

 エクリードは眉をひそめた。

「いらない?」
「私が欲しいのは私を好きだと言って笑ってくれるアルだもの。そんな地位、これっぽっちも欲しくない」