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 その瞬間、魔法騎士団の訓練所はシーンと静まり返った。皆、心中では言いたいことは腐るほどあったが、誰も何も言うことが出来なかった。

「聞こえなかったの? 貴女を魔法騎士団から除名します。明日からは来なくて結構よ。再就職先が見つからないのなら、街の警邏隊の仕事を紹介して差し上げるわ」

 渦中の人物──王都魔法騎士団で唯一の女性騎士であるキャロルは、信じられない思いで目の前の人物を見上げた。プリリア王女は扇を片手に握り、こちらを見下ろしている。

「恐れ入りますが、私が何か粗相を?」
「何か粗相を? 自分でやっておきながら、自分で分からないなんて。貴女はやっぱり魔法騎士には相応しくないわ」

 目を細めて軽蔑するような眼差しを浴びせられ、キャロルはサーッと血の気が引くのを感じた。

 ここ最近の自らの行為を思い返したが、魔法騎士の職を任免されるほどのことは思い当たらない。
 一体何がいけなかったのか、本当に分からなかった。

 キャロルは咄嗟に周囲を見渡した。同僚達は皆、青い顔で立ち尽くしている。ただ一人、彼女の上司であるアルフォーク団長が厳しい表情のままプリリア王女の前に出て、跪いた。

「リア様、恐れながら申し上げます」