その次の日、俺は彼女のいる高校へ向かった。



校長先生に案内され、体育館へ向かっていると屋上に2人の女の子を見かけた。



さぼりかな?



「どうした?城山君。」



「あっ、いや。何でもありません。」



「そうか。」



それから、少し長めの新任式が終わり校長先生に保健室を案内された。




「城山君。改めて、今日からよろしくね。」



「こちらこそよろしくお願い致します。」



「さっそく、その子の話をしようと思うんだけど。



これが、今分かっている彼女の情報なんだ。」




そう言って、夏目先生が渡してくれたのは2枚の紙だった。




その紙には、随分とアバウトな彼女の情報が記載されていた。




「今分かっているとは…?」



「昨日、電話でも少し話したと思うけど詳しくはまだだったよね。


名前は、吉野心和さん。


複雑な家庭環境で、今はその子の主治医の方と暮らしている。


そのような経緯に至ったわけはよく分かっていないんだ。



吉野さんは、私達大人の言葉に聞く耳を持たない子で、自分のことはあまり話さない子なんだ。



幼なじみの、十神華和さんがいるんだけどその子も吉野さんから口封じされているみたいで話してはくれない。」




そう言って、夏目先生は頭を抱えていた。



「そんなに、自分のことを話したくないんですね。」




そこまで、自分のことを隠す理由が何かあるのかもしれない。



複雑な家庭環境というくらいだから、きっと心も深い闇を抱えているのかもしれないよな。



それに、何も話さないってことは誰かに頼ることが出来なくなっているのかもしれないって事だよな。



俺に、できることはあるのか?




だけど、彼女の支えになりたい。




何があったのかは分からないけど、両親の身元が分からないってことはきっと彼女は両親に傷つけられたってことだよな。



心の傷が癒えないうちに、病気が見つかったとしたら今相当苦しんでいるはず。




主治医と暮らしていると言っていたから、その人に自分の気持ちを話せていればいいけど。




「あの、この子の主治医からは何か聞いていないんですか?


少なくとも、今は吉野さんの頼れる人はその主治医ってことですよね。」




「主治医にあたる人からも詳しくは聞けていないんだ。


去年の夏から、一緒に暮らしていること。


大きな荷物を持って、発作を起こしながらその主治医のいる病院へと向かったらしい。


そこで、その主治医が彼女を保護したみたい。


私や、担任が知ってるのはそこまでなんだ。」




まだ、17歳だよな?




夏目先生からの話を聞いて、うるさいほどに心臓が音を立てていた。




彼女を知りたい。



この手で、守りたい。



会ったことの無い彼女に、そんな感情が昨日よりも強くなっていく。




「本人の様子を見に行ってもいいですか?」




「いいよ。校内見学として案内するね。」