ーside 心和ー
身体の調子は、いつだって安定なんてしなくて。
常に息苦しさや胸の痛みが付き物で、その息苦しさに慣れてしまっていた。
本当は少しの症状があった時、話さなきゃいけないんだけど。
長年、この病気と付き合ってくれば薬でなんとかコントロール出来ている。
それでも上手く、コントロール出来ない時にいつも奥本先生に助けを求めていた。
それだと対応が遅れてしまうと、奥本先生に1度真剣な表情で言われたことを思い出した。
それに…
不思議とこの人の言葉には、温かみがあって。
真っ直ぐ見つめられると、縛り付けていた心の奥から知りたくもない感情が溢れ出て来てしまう。
この人に頼ってもいいのか。
頼りすぎて、後戻り出来なくなってしまうのではないか。
普通の生徒にも、この人はこんな風に接しているのだろうか。
私に病気があるから、ここまで優しくしてくれるだけで高校を卒業したら主治医と患者に戻るだけ。
たったそれだけの関係だから、この人の優しさに触れることが怖かった。
だって、この人が私に向けてくれる言葉や行動は温かみがあって、何度も心に寄り添おうとしてくれているから。
いくら未熟な私でもそれくらいのことは分かるから…
「大丈夫…です。
ちゃんと、奥本先生に気持ちも話して少し楽になりましたから。
だから…」
あれ…
どうして…
頬には生暖かい何かが伝ってその雫は震える手元に落ちていた。
どうして私…
こんなに涙が出てくるの?
「心和。ごめん、ちょっと抱くよ。」
返事をする間もなく、私の体は持ち上がり奏都先生と向かい合う形で膝の上に座っていた。
「私…分からないの…
奥本先生の優しさに答えるのも、先生の優しさに答えるのも。
私が病気だから、優しくしてくれてるんですよね…
頼っていいって言ってるのも、病気のことだけで…
それに答えちゃったら、自分が弱くなりそうで…怖い。」
ずっと考えていた。
奥本先生に引き取られてからも、私がまだ未成年であって保護をしてくれたから大人になったらまた1人になる不安を抱えていたのかもしれない。
だから、必要以上に奥本先生と関わっていくことも、この人と関わることに対してもいつかは関係が切れることを心配していたのかもしれない。
「やめて…」
「心和。顔をあげて。」
「え?」
「心和。たとえ、生徒や患者に病気があったからといって俺はこんなに優しくなんてしない。
今、ここにいる心和だから。
何も不安に思うことなんてないんだよ。
誰かに頼ることも、人の温かさに触れていくことも怖いものばかりでは無い。
心和にはまだ、知らない景色や世界がたくさんあるんだ。
俺は、心和と一緒にこれからの人生同じ景色を見ていきたい。
ずっと傍で心和を支えていく」
「ずっと…傍で?」
「あぁ。そうじゃなかったら前にいた病院を辞めてここに来たりはしてないよ。
心和…。心和のことをここに来る前から守るって決めていたんだ。
だから。肩の力を抜いて俺にもっと委ねてくれていいんだよ。
確かに、俺は元々保健医っていう仕事に興味があったから大学に通ってた時に教師の免許と医師免許の両方を獲得した。
だけど今はそんなことよりも、心和自身のことを知りたいって思った。
心和と出会ってまだ数ヶ月だけど心和の事が俺の中で気づいたら大切な人になっていた。
心和のこと、幸せにしたいってそう思った。
心和……。
初めて見たあの日から、ずっと好きだよ。」
城山先生の言葉に、不思議な気持ちになっていた。
中途半端に関わりを持たれることが嫌だったのかもしれない。
知りたかったのは、この人の気持ちだったのかもしれない。
程よく距離を置いて関わっていこうとしていたけど。
きっと私は…
必要以上に関わろうとしてくるこの人の気持ちを知りたかったのかもしれない。
身体の調子は、いつだって安定なんてしなくて。
常に息苦しさや胸の痛みが付き物で、その息苦しさに慣れてしまっていた。
本当は少しの症状があった時、話さなきゃいけないんだけど。
長年、この病気と付き合ってくれば薬でなんとかコントロール出来ている。
それでも上手く、コントロール出来ない時にいつも奥本先生に助けを求めていた。
それだと対応が遅れてしまうと、奥本先生に1度真剣な表情で言われたことを思い出した。
それに…
不思議とこの人の言葉には、温かみがあって。
真っ直ぐ見つめられると、縛り付けていた心の奥から知りたくもない感情が溢れ出て来てしまう。
この人に頼ってもいいのか。
頼りすぎて、後戻り出来なくなってしまうのではないか。
普通の生徒にも、この人はこんな風に接しているのだろうか。
私に病気があるから、ここまで優しくしてくれるだけで高校を卒業したら主治医と患者に戻るだけ。
たったそれだけの関係だから、この人の優しさに触れることが怖かった。
だって、この人が私に向けてくれる言葉や行動は温かみがあって、何度も心に寄り添おうとしてくれているから。
いくら未熟な私でもそれくらいのことは分かるから…
「大丈夫…です。
ちゃんと、奥本先生に気持ちも話して少し楽になりましたから。
だから…」
あれ…
どうして…
頬には生暖かい何かが伝ってその雫は震える手元に落ちていた。
どうして私…
こんなに涙が出てくるの?
「心和。ごめん、ちょっと抱くよ。」
返事をする間もなく、私の体は持ち上がり奏都先生と向かい合う形で膝の上に座っていた。
「私…分からないの…
奥本先生の優しさに答えるのも、先生の優しさに答えるのも。
私が病気だから、優しくしてくれてるんですよね…
頼っていいって言ってるのも、病気のことだけで…
それに答えちゃったら、自分が弱くなりそうで…怖い。」
ずっと考えていた。
奥本先生に引き取られてからも、私がまだ未成年であって保護をしてくれたから大人になったらまた1人になる不安を抱えていたのかもしれない。
だから、必要以上に奥本先生と関わっていくことも、この人と関わることに対してもいつかは関係が切れることを心配していたのかもしれない。
「やめて…」
「心和。顔をあげて。」
「え?」
「心和。たとえ、生徒や患者に病気があったからといって俺はこんなに優しくなんてしない。
今、ここにいる心和だから。
何も不安に思うことなんてないんだよ。
誰かに頼ることも、人の温かさに触れていくことも怖いものばかりでは無い。
心和にはまだ、知らない景色や世界がたくさんあるんだ。
俺は、心和と一緒にこれからの人生同じ景色を見ていきたい。
ずっと傍で心和を支えていく」
「ずっと…傍で?」
「あぁ。そうじゃなかったら前にいた病院を辞めてここに来たりはしてないよ。
心和…。心和のことをここに来る前から守るって決めていたんだ。
だから。肩の力を抜いて俺にもっと委ねてくれていいんだよ。
確かに、俺は元々保健医っていう仕事に興味があったから大学に通ってた時に教師の免許と医師免許の両方を獲得した。
だけど今はそんなことよりも、心和自身のことを知りたいって思った。
心和と出会ってまだ数ヶ月だけど心和の事が俺の中で気づいたら大切な人になっていた。
心和のこと、幸せにしたいってそう思った。
心和……。
初めて見たあの日から、ずっと好きだよ。」
城山先生の言葉に、不思議な気持ちになっていた。
中途半端に関わりを持たれることが嫌だったのかもしれない。
知りたかったのは、この人の気持ちだったのかもしれない。
程よく距離を置いて関わっていこうとしていたけど。
きっと私は…
必要以上に関わろうとしてくるこの人の気持ちを知りたかったのかもしれない。