ーside 心和ー



奥本先生の言葉は信じることができる。



いつも、私の気持ちと真剣に向き合ってくれる。



私から、逃げ出したことも1度もない。



信じられる奥本先生が、信用している人ならきっと大丈夫だと思う。




あれから、奥本先生はずっとそばにいてくれた。



久々に、誰かと一緒に眠った。




自分の気持ちと、感情を外へ吐き出したからか昨日は久々にぐっすり眠ることが出来た。




朝目を覚ますと、隣で眠っていた奥本先生はいなかった。




リビングへ向かうと、朝食と一緒に置き手紙が置いてあった。




『心和。おはよう。


目は、覚めたかな。



今日は、早出で大学へ行かないといけないんだ。




一緒に、朝食が取れなくてごめんな。



無理はせず、何かあったらすぐに連絡をして。』




今日、早出だったんだ…。





早出なのに、昨日は夜遅くまで私の気持ちを受け止めてくれていたんだ…。



昨日のことは何も書かれていなかった。



きっと奥本先生の優しさだと思う。



奥本先生は、いつも私を正しい道へ導いてくれる。



言葉をかけてくれた後には、私が決断するまで待ってくれる。




ゆっくりだけど、自分を変えるために行動ができるって奥本先生は信じてくれているから。



そうやって、奥本先生はずっと私を待ってくれている。



私が、城山先生を頼れるって信じてくれているんだろう。




そう簡単に、人を信じられないけど…。



だけど、私もずっと意地張って生きていても仕方ないことくらい分かるようになった。




自分では、どうにも出来ない数多くの出来事にぶつかって来たから。



発作も、1人でどうにも出来ない。




発作を起こした時、そばに誰かがいないと不安で仕方がない。





両親が、私を捨てた時もそうだった。



どうしようもない悲しみから、1人で立ち直ることなんてできなかった。




『自分を少し変えてあげるだけで楽に生きられることもあるんだよ。』




昨日、奥本先生がそう話してくれた言葉が蘇った。




私も、変わらないといけない。




自分の気持ちに、正直に生きたい。




奥本先生と、話をしてやっと分かった。




私が知りたかったのは、自分の正直な気持ちなんだってこと。




自分が、この先も1人の人間として生きたいってことが。





それから、私は朝食を終えてから学校へ行く準備をして家を後にした。




駅へ向かいながら、奥本先生にメッセージを送る。




それから、いつものように華和と一緒に高校へ向かった。