ーside 奏都ー



どれだけの言葉をかけても



どれだけの気持ちで向き合おうとしても



心が答えてくれなければ、何の意味だってない。



そんなことは分かっている。



それでも俺は、何度も心和ちゃんの心に語りかける。



彼女の心に届いてほしいから。



少しでも、彼女の救いになりたいと思うから。



その思いは、日に日に強くなり



いつか、心和ちゃんの頼れる存在になりたい。




いつか、1人の男として彼女を守れる存在になりたい。




屋上を後にした心和ちゃんの姿を探しに向かった。




「心和!!」



屋上から校舎へ向かい、2階へ降りたところでその叫び声が聞こえた。



俺は、声のする方に走ると心和ちゃんが倒れていた。




「心和ちゃん!聞こえるか!」



呼吸が微弱になり、冷や汗も尋常ではない程に溢れ出ていた。



「聞こえる…よ。」



血の気の引いた顔色が、相当彼女を苦しめていることが分かる。




それでも、心和ちゃんは何とか意識を保ってくれている。




急いで彼女を姫抱きにし、俺は保健室へ向かった。




保健室のベッドに、心和ちゃんを降ろし呼吸が楽になるようにベッドの頭側を上げた。




それから、発作時の薬を内服させると徐々に落ち着きを取り戻してくれた。



発作を引き起こし、疲れ果てた心和ちゃんは深い眠りへついていた。



「先生…。心和は無事?」


彼女の処置が終わるまで、心和ちゃんを見つけてくれた少女に廊下で待ってるように話していた。



扉を開けて、保健室に入ってきた少女は心和ちゃんを見て俺にそう確認した。



「ああ。君が、大きな声で助けを求めてくれたから手遅れにならずに済んだよ。


ありがとう。えっと…」




「十神華和です。」




「あっ、君が十神さん。」




「えっ?」




「いや、ここに来て吉野さんの話を夏目校長先生から伺った時、十神さんの名前が出てきたから。


吉野さんと、十神さんは幼なじみなんだよね。」




「私、何も言いませんよ。


心和との約束は破りたくないので。」




そう言って、十神さんは口を固く紡ぐ。



きっと、お互い信頼し合っているんだろうな。



だからこそ、吉野さんは十神さんには少なからず話をしているんだろう。



「えーっと、城山先生。」




「ん?」




「心和のこと、守ってあげてください。」




「えっ?」




「心和、何も言わないけど本当は不安で仕方ないんだと思う。


病気の発作が起きて、倒れたところを見たのは今日が初めてじゃないの。


いつも、心和は何の前触れもなく発作が起きて意識を失いそうになってる。



立っていられないほどになってしまうの。



担任から、倒れそうになったらすぐに話すように言われてるけど、きっと心和は自分がいつ倒れるか分からなくて不安なんだと思うんだ。」




十神さんの話したことは、間違ってはいないと思う。



心和ちゃんが、廊下で倒れた所を発見した時不安な表情をしていた。



それに、俺の白衣を握りしめていた。