体育館の倉庫裏は、太陽の光が遮断された薄暗い場所だった。
ジメジメしており、どことなくカビ臭い気がする。
「お前さー、瀬戸内くん達にこれ以上近づくんじゃねーよ」
「瀬戸内くんたちの何な訳?」
「アンタみたいな奴が瀬戸内くんといると迷惑するのわかんねーの?」
アワワワ。
こんなに同時に言われても、何から答えていいやら混乱してきた…。
とりあえず、この人達はあの2人に私が近づいて欲しくないみたいだ。
「瀬戸内くんは皆のものなんだよ!」
最後に言われたこの言葉にムッとした。
「皆のものって、誰が決めたんですか?
それに2人は”もの”なんかじゃありません。
感情を持った、1人の人間です。
彼等自身が、私のことを快く思ってなくて、本人にそう言われたのなら、仕方ありません。
それとも、本人から私に言うように頼まれたんですか?」
私はついついカッとなり反論すると、先輩達はますます怒りの表情を表に出した。
「アンタみたいなブスが瀬戸内くんたちに近づくと、株が下がるんだよ!」
株が下がる?
ああ、今こんな時代だからねぇ。
どこも株が下がって大変だってお父さんが言っていたけど、まさかこんな所でも……
って、何か違うような…。
「本人の口から聞かなくても、見てれば分かるんだよ!ブース!」
またまた先輩たちの言葉の矛盾さに、私は疑問を懐く。
「なぜ、本人の口から聞かなくても分かるんですか?
例え、本人の口から出たとしても、その人が本心で言っているかなんて分からないでしょ?
人の心なんて、その人自身にしか分からないものだと思いますけど。
人の心を、共有は出来ても、所有はできないと思います」
決まった──…。
今日の私、かっこいいなぁ。
なんて、自分に酔いしれていると、怒りMAXの先輩達がわたしの髪の毛をひっぱってきた。