「そうだ…担任の俺の身にもなってくれよ…。
俺が、どんっなに、肩身の狭い思いをしている事かっ!!」



台詞の一つ一つに感情がこもっているところからして、切実な様子がうかがえる。

先生も大変なんだなぁ…。



「吉本…、お前ちゃんと勉強したのか?」

「ええ。まあボチボチ…」


「ボチボチだとぉ!!なぜ、もっと全力で勉強しないんだ!!
いいか!?これは、おまえの将来に関わることなんだぞ!!」



私は、首を横にふる。



「いや先生…今のは謙遜です。
人間、謙虚な気持ちが大事でしょ?
だから本音をいうと、全力で取り組んだんですよ。本当は」



先生は唖然とした表情で私を見る。



「…まさか…本っ当~に、全力で取り組んで、この点数なのか…?」


「ええ。持てる限りのフルパワーで…」




「………」


「………」




先生は、また大きく溜息を吐き出した。

せんせい、あんまり溜息を吐くと幸せが逃げますよ?




「ハアァ…、お前と話していると気が抜けちゃうよ、先生は。

もう教室に戻っていいぞ……」



うな垂れる先生。

お疲れっすね。


私はちょっと考え、立ち上がると先生の背後に回る。



「おい!なんだ吉本!」


「先生、お疲れでしょ?肩もみでもさせて頂こうかと…」


「肩もみより、勉強してくれ…。そしたら俺の疲労もとれるはずだから…」


「まあまあ、そう仰らずに。
謙虚な気持ちも大事ですが、人間関係において、ゴマスリも大事でしょ?」



「………」