「あの人が噂の渡邊さんかぁ…」


私が呟くように言うと、クリリンはそれに反応した。

「ハ?知り合いじゃなかったのかよ」


「うん。クラスで渡邊さんの噂をしてたんだ。
 ブリッコしてるーとか、何とかって。
 同意を求められたんだけど、私、渡邊さんのこと知らなかったから、話してみようかと思ってさ」


私が説明すると、クリリンは慌てたように「バカ!」と言い、私の口を手で押さえた。


クリリンにそうされている意味が分からず、口をモゴモゴさせていると、目の前の渡邊さんがゆっくりとこちらを振り返った。



しまったーー!!

本人に聞こえちゃったんだ!
私って、ほんとバカだー。


クリリンが、やれやれと呆れたように溜息をついた。

「普通、本人を目の前にして、そういうこと言うか?」


仰る通りで…。


「ああ、私ってほんとバカ…」

「今更気づいたのか?」

「なによー!わざとじゃないもん!」

「わざとじゃなきゃ何でも許されるのかよ」

「…ううう……」



「…あのー?」


渡邊さんが、私達のやりとりに割ってはいった。


ああ、渡邊さん!
忘れてた!
謝らなきゃ!!