一也の言った”あいつ”が誰なのか、一馬にはすぐに分かった。
「それって、志穂ちゃんのことか」
一也は静かにうなづいた。
「俺…、怖いんだよ…。
自分の気持ちを伝えたら、志穂は俺から離れてく。
だから、この気持ちは俺の胸にしまっておこうって決めた。
でも、それがスゲー苦しくて、自分の気持ちを志穂に言っちまいそうで…。
何があっても志穂だけは失いたくないんだ」
一也の気持ちは前から知っていた。
それなのに、一馬は志穂と付き合っている。
一也の話を聞いて、一馬は何も言えなかった。
言葉が見つからなかった…。
一也は朝まで呑んで、家に帰って行った。
そして、一馬は志穂と逢うために借りた部屋へと帰った。