一也はこの日、仕事は休みで家にいた。
それなのに…、何故一也は嘘をついたのか。
最近の一也は、自分の中のある想いに悩み、苦しんでいた。
それは、十七の時から想い続けている志穂への想い…。
その想いを抑えれば抑えるほど、晴海に逢うことを遠ざけてしまっていたのだ。
一也は空を見上げた。
「晴海…、すまない…。
お前が悪いんじゃないんだ、悪いのは俺だ。
俺はずっと志穂のことが好きなんだ。
志穂のことが忘れられないんだ。
それなのに、俺は晴海と付き合ってる。
このままじゃダメだって分かってる。
分かってるんだ…。
なのに俺は…。最低の男だ…」
一也は自分を責めた。
そんな一也の苦しみなど、志穂は気づくはずもないのだが…。