一馬は一週間ほど前に、この不動産屋を訪れていた。
一馬の担当者が笑顔で対応をする。
「この間の物件、契約したいのですが」
「ありがとうございます。
あの物件はなかなか人気のある物件で、
土屋様に気に入って頂けると思っておりました。
それでは、早速契約書を作らせて頂きます」
担当者はそう言うと、事務所の中へと入って行った。
実は、志穂となかなか逢えない事を一馬も悩んでいて、
店でも部屋でも逢えないことを考えて、別に部屋を借りることを考え、
この不動産屋に来た。
部屋を借りれば、一也の目を気にすることなく逢える。
部屋の場所も、お互いの部屋からも店からも離れた場所にした。
少し迷っていた一馬だが、昨日の志穂を見て、部屋を借りる決心がついた。