志穂が目を覚ましたのは、午前十一時を過ぎていた。
横を見ると、一馬が微笑んでいた。
「どうだ、具合は。
志穂、部屋の前で倒れててビックリしたぞ」
『私…、倒れてたの…』
志穂は昨日の記憶を辿り始める。
『昨日は、一也から電話が来て、一緒にご飯を食べに行った。その時…』
あの時一也が言った言葉
「訳ありの男」
その言葉が何度も頭の中でリフレインした。
『私、帰らなくちゃ、お店に行かなくちゃ』
志穂はそう言ってベッドから出ようとした。
「まだ熱が下がってない、ここで寝てろ」
一馬はそう言って、志穂を抱きしめた。
「今日は俺がずっとそばに居て、志穂の看病するから。
今、無理したら大変な事になる。
だから、今日一日はゆっくり休んでくれ」