店を出た志穂は、家ではない場所に向かっていた。


それは一馬の家だった。


一也に言われた事がショックで、一人で部屋に居たくはなかった。


だが、一馬の家に来ても、一馬は仕事中で部屋に居ないことは分かっていた。


それでも、一馬に逢いたくて仕方がなかった。


一馬に逢って、思い切り抱きしめて欲しかった。


そうすれば、元気が出る様な気がした。


一馬の部屋の前に着き、居ないことは分かっているがチャイムを鳴らしてみる。


が…、やはり応答はない。


『一馬さん…、逢いたいよ…』


志穂はそのまま部屋の前に座り込み、いつの間にか眠ってしまった。


志穂は夢を見ていた。


高校生の頃、一也とよく笑っていた時の夢を…。