店に来て一時間、一馬は二人の元には姿を見せない。


騒がしい中、大きな声で話していたので、志穂はのどが痛かった。


『一也、私、もう帰るわ。
大きな声で話しすぎて、のど痛いし。
それに、この騒がしい雰囲気苦手だから』


志穂がそう言って立ち上がると、一也も立ち上がった。


「俺も帰るよ。
なっ、これから呑みに行こうぜ。
志穂の振られた話も聞きてーしよ」


『振られた、振られたってうるさいよ』


こうして、志穂と一也は店を後にした。


店を出る瞬間、志穂はチラッと店の中を見回した。


気づかないうちに、一馬の姿を探している。


だが、この人ごみの中、一馬の姿を見つけることは出来ずに、店を出た。