我に返った志穂は、慌てて笑顔を作り、一馬の手を握った。


『噂通りのイケメンですね。
とても一也のお兄さんとは思えないくらい』


とようやくいつもの志穂に戻った。


「俺はどうせイケメンじゃねーからな」


と一也はふてくされていた。


「今日は楽しんでいって。
今度、みんなでメシでもどうかな」


と一馬が言った時、一馬が客に呼ばれた。


「じゃ、またあとで」


一馬はそう言って、人ごみの中に消えていった。


一馬の後ろ姿を見ていた志穂の頭を、一也が叩く。


「アニキは止めとけよ。
お前、絶対に泣かされるからな」


『痛いなっ、余計な心配しないで下さい』


この時、運命の扉は開かれていた事に、
志穂は気づいていなかった…。