部屋に入った志穂は、すぐに掃除と洗濯を始める。


この部屋に来た時の志穂の決まりごと。


掃除と洗濯をしながら料理を作る。


鼻歌なんて歌いながら。


志穂にとって、こうやって一馬を待つ時間は至福の時。



こんな志穂の後を追って、部屋を見つめていた者がいた。


「ここが彼氏の家か…」


そんなことには全く気づいていない志穂は、一馬の好きな料理を作り、
一馬の帰りを待っていた。


『今日は一馬の好きなカツカレー』


一馬の帰りはいつも朝方で、それまでは一人でこの部屋で待つ志穂。


この部屋での一人の時間は決して寂しいものではない。


志穂はここ数ヶ月、この部屋で一馬と逢う様になって、
密かに明るい未来を夢見ていた。