この引っ掛かりが、とんでもない方向に向くことになるとは、
志穂はそこまでは考えつかなかった。
この三日ほど前、その原因となることが起きていた。
一也は一ヶ月ちょっとぶりに彼女に連絡をした。
「話があるんだ。今日そっち行くから」
彼女はこの電話で直感した。
一也は別れを言うために来るのだと。
「うん、分かった。何時くらいになる。
一也、ご飯食べて行くよね、何食べたい」
彼女は不安を打ち消す様に明るく話をする。
「たぶん、八時くらいになると思う。
メシはいらない、話終わったらすぐ帰るから」
一也の冷たい言葉に、彼女は涙が出そうになるのを必死にこらえていた。
「仕事忙しいんだもんね。
分かった、八時くらいね、待ってるから」