「やっぱ凌介じゃんか〜! え、めっちゃ久しぶり!」
「日向?」
「おー!そうだよそう! え〜うれしい〜。中学の卒業式以来じゃね? 凌介全然会ってくんねえんだもん。まだサッカー続けてんの?」
「そーそー、だから忙しいんだよ」
「なんだー続けてんのかあ。中学んときからうまかったもんなあ。てか凌介はひとりで来たの?」
「いや、俺は彼女と」
目の前で繰り広げられる会話を空気のように静かに横で見ていれば、突然、ふたりの双眼がこちらを向く。
「あ、こんにちは」
「は、まって……」
「え、なに?」
とりあえず挨拶をするわたし。なぜか動揺する凌介くんの中学時代の元気な友達。呆然とする凌介くん。初対面の人にじっと見つめられ、訳も分からず戸惑っているとズンズンとこちらに向かって距離を縮めてきた。
「天使ちゃんでしょ?! 桜台高の!」
「はい?」
「俺、凌介の友達の谷川日向って言うんですけど! パン屋で会ったことあって! 覚えてますか!?」
重力に任せていた両手を持ち上げられ握られる。
あまりの迫力に圧倒されて少し後ずさりするも、繋がった手のせいで距離はあまり変わらない。目の前の彼のキラキラとした眼差しも変わらない。