えぇー、世莉ちゃん怖いの大丈夫なんだ。
かれこれ5回くらいは聞いたかもしれない。それほど彼にとっては衝撃的だったらしい。わたしがホラー好きだというギャップに驚いているらしい。
「凌介くんとホラー映画観れたらよかったのに。周りの友達大体苦手って言う」
那乃はもちろん、ママもパパもあんまり好んで観るタイプではない。だから仕方なくひとりで観ている。だけどやっぱり、誰かと一緒に恐怖感を味わい共有しながら観るのが楽しさを知ってしまうと、少し物足りなさを感じる。
「じゃあ今まで観たいものとかひとりで観てたの?」
「んー、ほとんどそうかな。中学のときはホラー大丈夫な人いて、その人とときどき観てたりした、かな」
「そっか。その子も怖いの得意なんだ。尊敬する」
「尊敬って」
凌介くんと話すとショッピングモールまでの道のりはあっという間で、着いて早速映画館に向かった。
凌介くんに却下されたホラー映画は観ずに、もともと観る予定だった恋愛映画を観た。高校生の三角関係の物語。簡潔にまとめれば、タイプの違うふたりの男の子が、主人公の女の子を取り合う内容。
映画を観たあとは感想を言い合うのが醍醐味だ。
「まさか幼なじみのほうと結ばれるとは思わなかった」
エンドロールまで見届け席を立ち、まさに今その醍醐味を楽しんでいる最中だ。