「なんでそんな笑うの?」

「ごめん、世莉ちゃんの声が一気に明るくなったから」

「恥ずかし……」


顔が熱い。汗をかきそうだ。ついさっきお風呂から出たばかりなのに。



「楽しみ?」

「もちろん」



思えば凌介くんとデートとか、数えるほどしかしたことない気がする。だから余計に楽しみだ。



「明日学校で聞いてくれてもよかったのに」

「俺もそうしようと思ったんだけど、この前世莉ちゃんが電話とかしよって言ってくれたから」

「覚えてたの?」

「忘れないよ普通。世莉ちゃんが言ったことは一言一句覚えてる」

「それはさすがに嘘だ」


素早く突っ込めば「わかりやすかったかー」なんて笑う。


「凌介くん、嘘下手だね」

「世莉ちゃんも上手くないでしょ」

「いや、凌介くんよりは上手……だと思う」

「急に自信なくさないでよ」


ふっとやさしく笑う声が聞こえる。電話越しで聞くのがもったいないと思う。その優しい声を、顔を、直接見れたらもっと幸せだ。



「じゃあ、また明日学校で」

「うん、おやすみね」

「ん、おやすみ」


それからたわいない話をして電話を切った。スマホに映し出された時刻は22時前。1時間近くも話していたことにビックリする。



ベッドに背を預けて天井を眺める。まだ週の真ん中だけど、楽しみな予定がひとつできたことで、今週も乗り切れる気がした。すでに金曜日が待ち遠しい。