「急に世莉ちゃんから好きな人いる?なんて聞かれたからおれのこと気になってるのかと思った」

「え?!そんなことないよ。わたし彼氏いる」


違う違う、と首を横に振れば「そんな否定しなくても」苦笑いを浮かべる由唯くんが映る。



誤解を招くような質問を最初にした私が悪かった。できる女の子なら『もともと由唯くんのこと気になってるよ?』なんて言葉がすぐに出てくるんだろう。けれど私にはそんな能力を身につけていないし、そもそも凌介くんがいるのにそんな口説くような台詞を吐くことなんてできない。




「さっきの話の続きだけど、」


それにしてももっと気の利いた返事ができなかったものかと反省していれば、不意に由唯くんから言葉が放たれた。


「続き?」


復唱すれば、「そう」と頷く。


「答えになるかどうかはわかんないけどさ、好きな人が困ってたら進んで優しく接したいとは思うなー」



まー、おれの場合はだけどね、と付け加えられた言葉。



やさしい表情に、由唯くんも恋してるのかななんて考えてみる。由唯くんは話しやすいし気配り上手だ。まだ2回しか会ったことのないわたしがこう思うんだから、きっともっと素敵なところがたくさんあるはず。



「ありがとう、相談乗ってくれて」

「これくらいいつでも聞くよー」



公園にいる人数も徐々に減ってきて、辺りに静けさが広がってきた。風の音が聞こえて、その涼しさに秋の終わりを感じていれば、ピロン、と鳴った通知音。一瞬自分のものかと思ったけど、マナーモードにしていたことを思い出す。と、由唯くんがおもむろにポケットからスマホを取り出した。