ふう、と息が零れた。



全然、そんなんじゃないのに。どこをどう見て恋をしていると判断したのか気になる。恋とか以前に、由唯くんについてはまだ名前しか知らない。そんなことを思いながら制服に着替える。

結んでいた髪をほどいて櫛でとかす。汐里さんの言葉の意味とは少し異なるだろうけど、身だしなみもきちんと整えた。



お店を出るときにひと声かければ、「がんばって!」なんてエールをもらった。気持ちだけをありがたく受けとり、扉を開ける。


お店を出たすぐ横で、由唯くんはスマホを片手に立っていた。リンリン、という鈴の音でスマホから目を離してこちらを見る。



店内にいなかったから、正直帰っているかもしれないと思っていたけど、律儀に待ってくれていたみたいだ。



「なんか、ごめんなさい」

「ん?」

「巻き込んじゃったみたいで」


スラリと背の高い由唯くんを見上げた。

由唯くんはただお店にパンを買いに来ただけなのに、わたしの彼氏だと間違えられ、一緒に出かけてきたら?なんて提案されて。迷惑しかかけてないような気がする。


「あー、全然? まあ展開の速さとテンションの高さには若干ビビったけどおれの友達にも似たよーなやついるし」


たまにちょーうるさすぎて友達やめたくなるけどね、なんて笑いながら付け加えられた言葉に、「そんなに……?」と首を傾げた。