改めてポテトサラダを口に運び、今よりも少し幼い頃を想起していれば「世莉ちゃん」とクラスの女の子に呼びかけられる。
「先生が呼んでたよ」
「先生?」
「うん、なんか職員室来てって」
「そっか、呼びに来てくれてありがとう」
「いえいえ、話の途中にごめんね」
先生から呼び出しなんて高校生活の中で覚えてる限り一度もない。だからこそ気になって「なんだろ……」そう零せば、目の前に座る那乃はなにやら怪しい笑みを浮かべる。
「世莉なんか悪いことでもしたんじゃなーい? 課題未提出とか遅刻してばっかとか」
「それは那乃じゃん」
呆れ気味に笑えば、ふふっと那乃も笑う。
「ほら、世莉ってなんか抜けてるとこあるじゃん。知らないうちに先生のこと怒らせてたりして」
「えぇー、とりあえず行ってくるね」
残りのサンドウィッチを食べ終えて、お弁当箱を片付ける。「行ってらっしゃーい」という声を背中に教室を出た。
先生のいる職員室は、わたしたちの教室より1階下にある。
お昼休みということもあって人気のない廊下。階段を一段一段下りるごとに、足音が辺りに響く。