「おっはよー!」
校門をくぐりぬけようとしていたところ。後ろから大きな声とともに肩を叩かれて「わっ、」と反射的に足を止めた。
「びっ、くりした」
振り向けば、へへっ、と満足気に笑みを浮かべるショートカットの彼女。
「朝から心臓に悪いよ」なんてぼやけば、「ぼーっとしてる世莉が悪いんだよー」と返される。そのまま隣に並んで歩き始める那乃に、わたしもつられるように足を動かした。
「ねえ、昨日電話したのになんで出てくれないのー」
不満そうに呟いて頬を膨らませた那乃。その一言で、はっと思い出す。
「ごめん、忘れてた……」
バイト終わりに確認した那乃からの着信。
家に帰った後、お風呂上がりにスマホを見たときに画面に表示されていたからそこで一度思い出したのだけど。なんとなく電話をかける気分になれなくて。後にしようと思っているうちに眠っていて、気づけば日付が変わってしまっていたのだ。
「珍しいねー? 世莉がそんなこと言うなんて。あたしが電話かけたらいつも折り返してくれるのに」
「そうかな」
「そうだよー」
なんとなく、なんて言っても原因はわかってる。
一晩経っても昨日のことが信じられなかった。