「こんな時間までなにしてたの」
「こんな時間って、まだ8時台だよ」
「でももうこの時期真っ暗じゃん。不審者とかに襲われるよ」
「大丈夫。途中まで凌介くんに送ってきてもらったし、それに家までそんな距離もないし」
「あー、彼氏?」
「あ……、うん」
那乃と話すときみたいな温度で、つい凌介くんの名前を口にしてしまった。特別隠していたわけでもないけれど、いざこのような状況になると勝手に気まずさを感じてしまう。
「…………凌介くんと映画見に行ったの」
「なに急に」
「さっきこんな時間までなにしてたのって聞いたのは西野くんだよ」
「あー、そうだったわ。楽しかった?」
「うん」
「そ、」
はーっと息を吐きながら両手を擦る。夜になるとこんなに冷え込むなんて思ってなかった。ブレザーを着ているとはいえ、アウターを持ってくるべきだったと後悔する。
「そうだ。西野くんこの映画観た?」
ブレザーのポケットからスマホを取りだして、先週公開されたホラー映画のポスター画像を見せる。
「観た。結構おもしろかった」
「そっかー。わたしまだ観てないんだよね」
「じゃーネタバレしていい?」
「絶対やめて」
断固拒否の態度を見せると、西野くんはははっと笑った。なにが面白かったのかと疑問に思っていれば、「中学のときさ、」と西野くんは話し始める。