「てか、天使ちゃんってなに?」
わたしも聞きたかった。スルーしてたけど、聞き間違いかと思ったけど、どうやら凌介くんの耳にもそう聞こえていたみたい。
「うちの高校で有名なんだって! パン屋で働いてる声もかわいい、笑顔もかわいい、とにかく天使級にかわいい女の子いるって。会えたらラッキー。1週間は幸運が続くって噂。その子が今! 俺の目の前に!」
じゃじゃーん!と見せびらかすように手を広げてヒラヒラとさせる。恥ずかしい。やめてほしい。
「あんなにかわいいから確実彼氏いるだろうってみんな話してたんだけど、まさか凌介の彼女だったなんて……」
うぅ、と目元を腕で隠して泣き真似をする谷川くん。リアクションのバリエーションがとても多い。
「マジかあ……俺ショックなんだけどー。でもめちゃめちゃ嬉しいんだけどー」
ひとりごとのように言葉を連ねる谷川くんに、「なんだそれ」と凌介くんはわらう。
「日向はひとりで来たの?」
「なわけあるかぁ! 俺だってか、か、彼女はいないけど友達くらいいるわ!」
ほら!と元気よく指さした先。そこには3.4人の男子集団。
「日向、高校でちゃんと友達できたんだ」
「どういう意味だよそれ! 凌介俺のことなんだと思ってんの!」
「え…………、人間?」
「そ、そこにハテナはいらなくない……?」