「大丈夫だぞ、くぅ」

 それから竜は毎日美利の頭を撫でてくれる。

 あの日から美利はほとんど笑わなくなった。人形のようにただ学生をしている。

 智樹はこの三日、目を開けない。
 骨折はしているが命に係わる外傷はないらしい。


 美利は変わらずに手紙を書いている。
 宛先はもちろん智樹宛だ。

 そして毎日裏庭の木の穴に入れている。


 今日も裏庭に行き手紙が二通入っているのを確認。
 その両方とも『智樹へ』という手紙だ。

 『智樹より』という手紙は一通も入っていない。

 そして美利は『智樹へ』と書かれた手紙を一通増やす。

 そのまま木に背中を向けて座り込んだ。

「智樹、学校においでよ。あと一か月で卒業だよ」

 美利は誰も居ない空間を見つめて話しかける。

「一緒に卒業証書もらおうよ。だから明日学校においでよ」

 一人、話しかける。