とりあえず感が否めない美利の謝罪をみて『おいおい…』と苦笑いで返す智樹。
そんな表情を後目に美利が見ていたのは前方の階段にある踊り場に付いている窓だった。
呼び止められた理由も聞かずに美利は再び歩き出してその窓に近づく。
小さく聞こえる後ろからの智樹の足音を耳に入れ、心地が良いと感じながら美利が見た景色は真っ青な海だった。
茶色く乾いたグラウンドの周りを囲んでいるフェンス。
それを乗り越えその下の街よりも遠くに見える青い海は左半分を校舎に隠されながらも極小の砂粒を大量に浮かばせているかのように輝いていた。
真下に見える駐車場の端には車が一台もなく、テニスコートとの隔たりを作るかのように伸びている、細いながらも少しだけ大きくなった葉を付けた街路樹が小さく風に揺れ動く。
「こんなところあったんだなぁ」
横から一緒に窓の外を眺める智樹が呟いた。
四階の踊り場に付いている窓は太陽に照らされ小さく光を反射していた。
「山の上に学校があると景色もきれいだな」
智樹のそんな言葉を聞いてか聞かずか、美利は四階と三階の間の踊り場まで無言で下りてゆく。
そこにも同じく窓があったが、こちらは少し開いていた。