智樹が左手でつまんでいたのは、朝捨てた紙切れの一枚だった。

「これに見覚えはあるか?」

 小さく頷く美利。

 怖くて智樹の顔が見られない。

「待て、待て智樹。
 そんなに怒ってるからくーが怯えてる」

 琢己の言葉にはっとする智樹。

「ごめん、ごめんごめん、くーのことを怒っているわけじゃないんだ」

 そう言って美利の頭を撫でた。
 少しホッとする美利。


「これ、どこにあった?」

 智樹の質問に『机の中に…』と呟く。

「ごめん、破かれてて智樹の字だってわからなかったんだよ」