周りを取り囲むざわめきで一日目の静けさとは打って変わり自分の足音すら聞こえてこない。


「なぁお前どこに入る?」
「俺は…」

「やっぱり大人の女は茶道部でしょ」
「え~、入る人少なそう…」

 廊下を歩き始めて数秒も経たずに様々な生徒の様々な会話が美利の耳を通り抜けていった。

「よう」

 もちろん、誰かが誰かに掛ける声も美利は自分へのものだとは思っていない。

「タ、タ、タタ…」

 廊下の端のほうに近づくとようやく自分の足音が聞こえてくるまでの静けさになった。

「おい、まてよ『くー』」

 ふと自分が呼ばれた気がして足を止める。

 少し前の呼び声は自分に向けられたものだったのか?
 ちらりと振り返る。

「ごめん、名前呼ばれるまで他人事だと思ってた」

 振り返った先に居たのは入学初日にお友達第一号に任命された谷口智樹がいた。