「あの日は本当にびっくりしたんだ。でも、本当にびっくりしただけなんだ。自分でもあんなに泣くとは思わなかった」

 そう言って照れ臭く笑う。

「びっくりして泣いたのもあるけど、五人の関係が崩れるんじゃないかってことが怖くて涙が出たんだよ」

 ちらりと竜を見ると下を向いて動かない。

「僕は弱いんだ。居てほしい人たちが居なくなるのが怖いんだ」

「竜は酷いことを僕にしたと思っているだろうけど、僕は知っているよ、竜の手はとてもやさしかった。僕のことをすごく好きでいてくれているって分かったんだ」

 左手首についているブレスレットを思い美利も下を向いた。

「僕は竜に無理強いをしようとしている。罪悪感に埋もれそうになっているのに、本当の意味で今まで通りの竜でいてくれってお願いしてるんだから」

 美利は腕を伸ばして竜の左手を握る。

「この一か月、凄く苦しかった。クラスでは会話をしてくれるけど誰もいないところでは声もかけてくれない。四人の中の竜が居なくなるだけで、僕は凄く孤独を感じていたんだ」

 握る手に力を込める。