三人が近くに来る前に智樹が耳打ちをする。
「本当に竜を呼んで大丈夫だったのか?」
「大丈夫だよ」
美利は笑顔で返した。
そろってダウンジャケットを着ている三人だったが、竜だけ少し後ろに下がって近付こうとしない。
「あけましておめでとう和巳、琢己。
竜」
おめでとうと返す和巳と琢己。
そして後ろの方で『うっす』と小さく声を出す竜。
それを聞いた琢己は竜の胸ぐらをつかんで美利の前に突き出した。
「あ…、いや、ごめん」
竜との事件が起こってから一か月ほど。
事件の当日はもちろん、翌日も二人の関係はギスギスしたものだった。
竜が後悔に苛まれて声をかけられずに居たが今回のように琢己が胸ぐらをつかんで美利の元に連れて行き、しっかりと謝らせたのだ。
その時の美利は、『びっくりしたけど、僕は怒っていないよ』と返事をした。
「今まで通り楽しく話をしたい」
そう言って今までと変わらず仲良くしていた。表向きは。