中学生の時代にも誰かを好きになったことはある。

 しかしそれは恋と言えるものかと言えば自信は無かった。


 春に智成に出会いそこで初めての恋を経験したのかもしれない。

 自分の感情と思考を照らし合わせて何が正解なのかを考えるが答えのない感情を探し求めるようなものだった。


 机の中に窮屈そうに入っていた教科書類をカバンの中に詰め込むと元気のないオーラを出しながら教室を後にする。


 目指した場所はいつもの裏庭。


 木の根元に座り込みカバンを近くに放り出した。

 外気温は十度を下回っている。
 厚手のコートを着ているが流石に寒い。

 体育座りをしてその足を両腕で抱え込む。

 彼女の目は飽きることなく冷えて青く澄んだ空を見つめていた。