肘をついて頭を支える美利に『怒るなよ』と笑いをこらえながら声をかけるのは和巳。

「怒ってないよ」

 ぶっきらぼうに返事をする美利に、

「いや、怒ってた」
 と、琢己が顔を近寄せて言う。

「もー! 何なんだよ!」

 首を振り回して上を見ると自席の正面にいる智樹の顔が視界に映る。

 口の端を軽く上げて笑いながら見つめてくる。
 目をそらしたら負けだと思った美利もじっと見つめ返す。

「くーが可愛いんだよ」

 そういって白い歯を見せて笑う智樹の台詞を聞いてぶっきらぼうだった美利の表情は無表情になる。

「はぁ?」

 智樹への視線はそらさない。

「くぅ」

 竜に声をかけられ、『なんだよ』と言いながら右側へと視線をずらした。

「かわいいぜ…」

 一瞬胸が高鳴った自分に恐怖を覚えながら反発する。

「竜! なんだよ! まるで僕がくどかれてるみたいじゃないか」
「くどいてんだよ」

 竜の今までにない真剣な表情。

「……―――あのなぁ」

 四人に見つめられる美利は少しだけうつむく。

「お前たち、噂話で遊んでるだろう…!」